大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和50年(ワ)4932号 判決 1978年5月19日

原告(選定当事者)

藤田紀子

原告(選定当事者)

藤田温巳

被告

植野紀久子

右訴訟代理人

松尾利雄

被告

有限会社深広商店

右代表者

深井正三郎

被告

深井正三郎

右両名訴訟代理人

間狩昭

外二名

被告

西尾利次

主文

一  被告らは各自

1  原告藤田紀子に対し金七六五万四、〇四七円

2  選定者藤田耕一郎に対し金一、二七九万〇、四八五円

3  選定者藤田正男に対し金一〇〇万円

4  選定者藤田ヨシに対し金一〇〇万円

5  原告藤田温巳に対し金一〇万八、一二〇円

と各金額に対する昭和五〇年一月九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを五分し、その三を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。ただし被告らにおいて共向して原告藤田紀子に対しては金四〇〇万円、選定者藤田耕一郎に対しては金六〇〇万円、選定者藤田正男、同藤田ヨシに対しては各金五〇万円、原告藤田温巳に対しては金五万円の各担保を供するときは、右仮執行を免れることができる。

事実《省略》

理由

一請求の原因1の事実は、当事者間に争いがない。

二本件事故発生の経過について

1  請求の原因2(一)のうち、被告西尾との関係では久善の死因を除き当事者間に争いがなく、被告植野との関係では久善が昭和五〇年一月七日夕食を食べるために「よし香」に来てふぐの肝臓の切身を二、三切れ食べたこと、久善が死亡したことは当事者間に争いがなく、被告深広商店、同深井との関係では久善が昭和五〇年一月九日午前一〇時四〇分ふぐ中毒により死亡したことは当事者間に争いがない。

2  右各争いのない事実と<証拠>を総合すると次の事実が認められる。

(一)  被告西尾は、昭和四〇年三月から同四八年までは料理店「むつみ」で調理師として働いていたが、被告深広商店の代表取締役被告深井とはそのころからの知り合いで、「むつみ」は被告深広商店から鮮魚の仕入をしており、同商店が同四六年二月からふぐを販売するようになつてからは、ふぐも同商店から仕入れていた。その後同四九年一〇月から被告西尾は「よし香」に勤めたが、「よし香」において仕入一切をまかされた同被告は、ふぐを含め鮮魚類は被告深広商店から仕入れた。

(二)  被告深広商店では、ふぐについては、肝臓等の内臓物は完全に除去したうえでこれを納品していたが、被告西尾は本件事故発生以前から、自己が食べるためと称し、被告深広商店からふぐの肝臓を持ち帰つたり、また注文したふぐの身と共に配達してもらつたりしていたし、被告深広商店の従業員においても、被告西尾が特に注文しないでもふぐの肝臓をその身と共に配達することもあつた。

(三)  被告西尾は、ふぐの肝臓が猛毒(テトロドトキシン)を含んでおり、本件条例によつてこれを食用に供することが禁じられていることは知つていたが、十分に水にさらしたものでかつ少量であれば食しても生命に危険はないものと考え、右深広商店から持ち帰つたり配達されたふぐの肝臓を水にさらしたうえ自ら食していたほか、てつちりの味がよくなることもあつて「むつみ」「よし香」においてなじみの飲食客に提供していた。(なお、「よし香」は、ふぐ販売営業の許可をうけていなかつた。)

(四)  同五〇年一月六日昼頃、被告西尾は被告深広商店からの鮮魚の仕入を電話ですませたが、更に同日午後二時ころ被告深広商店に赴き、同店のふぐ解体用調理台のうえに置いてあつたとらふぐの肝臓約四〇〇グラム一個を、同店のふぐ解体及び販売担当の従業員水谷芳明、同深井勝にもらつてゆく旨告げたうえ「よし香」に持ち帰つた。そして被告西尾は、右ふぐの肝臓を食用に供するため、塩もみした後水道の水にさらしておいた。

(五)  翌七日午後八時三〇分ころ久善は友人の播口と二人で夕食を食べに「よし香」を訪れ、てつちりを注文し、午後九時ころ同店の仲居泉光子の接待で右注文したてつちりを土鍋で煮立てて食べ始めたが、被告西尾は、久善が「むつみ」時代からのなじみ客であり、「むつみ」のときにも久善が同被告の調理したふぐの肝臓を食していたこともあつて、久善に対し、二、三切れなら大丈夫と言つて、前記のとおり前日被告深守商店から持ち帰つたふぐの肝臓の切身七、八切れ(一切の重さ約二〇グラム)を久善らが食べていたてつちりの土鍋に入れた。そして久善と播口はいずれも右ふぐの肝臓を二、三切れずつ食べ、被告西尾も自ら二、三切れ食べた。その後久善らはその日の午後一〇時三〇分ころ「よし香」を出た。

(六)  「よし香」を出た直後、久善は、舌がしびれたようだと言つていたし、午後一一時ころ帰宅した際にも、久善は、妻の原告紀子にふぐの肝臓を食べたが舌がしびれる旨言つていたが、ほどなく床に就いた。ところが、翌八日午前一時三〇分ころからは手がしびれてきた旨訴え始め、更には足にもしびれが来て起き上ることもできない状態となり、同日午前三時ころ救急車で八尾市民病院に搬送されたときには、久善は呼吸困難におちいり、同病院医師の問にも満足に返事できない状態であつた。このような久善の症状及び原告紀子の話により、ふぐ中毒と判断した同病院医師によつて直ちに酸素吸入が施され、呼吸中枢刺激剤の注射等がなされたが、その後も久善の容態は悪化し呼吸停止、心臓停止を来たし、これがため人工呼吸、強心剤の投与等の処置もほどこされ、いつたん心臓は回復したものの自発呼吸のないまま危篤状態が続き、翌九日午前一〇時四〇分ふぐ中毒により死亡した。

(七) その後、被告植野は大阪府から本件条例違反により同月一一日から一八日まで「よし香」の営業停止の行政処分を受け、被告深広商店も又、大阪府からふぐの肝臓の管理不十分の故をもつてふぐの内臓物の処理方法につき規定する本件条例四条六号(後記三1参照)違反により同月一六日から七日間の営業停止の行政処分を受け、右被告両名はいずれもその処分に服した。

前掲甲第二九号証の一及び証人深井勝の証言中右認定に反する部分は措信できず、他にこれを覆すに足りる証拠はない。

3  右事実によれば、久善は「よし香」で食したふぐの肝臓に含まれたふぐ毒により、中毒死したものと推認できる。

もつとも<証拠>によれば、久善は本件事故当日風邪ぎみであつたこと、同席上で同時にふぐの肝臓を食した被告西尾にはその後何ら異常を生せず、播口は手足のしびれを感じたもののそれ以上の症状はなかつたことが認められるが、右事実をもつてしては右推認を覆すには足りないし、他にこれを覆すに足りる証拠もない。

三被告らの責任について

1 ふぐの肝臓には猛毒が含まれ、これを食して中毒死する者があることは公知の事実であり、<証拠>によれば、ふぐ毒(テトロドトキシン)の毒性は、青酸カリの一、〇〇〇倍にも匹敵する強さを有し、食後三〇分ないし五時間で発病し、主に末梢神経を侵し、手や足や全身の運動麻ひ、呼吸運動、血管運動神経麻ひ、知覚神経麻ひなどを惹起し、意識混濁、呼吸停止を来す、死亡率は、四〇ないし八〇パーセントに達するといわれる。そこで、ふぐ毒事故予防のため大阪府においては本件条例をもつて、食用に供するためにふぐの販売をする者(ふぐ販売営業者)及びその従業員は、(一)ふぐは、内臓及び血液を完全に除去し洗滌したものでなければ、これを販売又は保有してはならない。(二)ふぐの卵巣、肝臓、胃腸その他毒性のあるものは、これを食用に供し又は食用に供せしめてはならない。(三)ふぐの内臓及び血液その他の廃残物は、完全な専用容器に収納して、完全な方法により処理しなければならない旨(同条例一条、四条二号、三号、六号)、料理屋、飲食店等の営業者で、ふぐ料理を客に提供するものは、ふぐ販売営業者とみなす旨(同条例一条)規定し、ふぐの販売、調理等の営業者に対する規制を行い、一方、本件条例に違反し又は衛生上その他必要があると認められるときは、知事は、営事を禁止し又は停止することができる(同条例六条)ほか、ふぐ販売営業者が本件条例二条四条に違反して無許可で営業をなしもしくは前記遵守事項を守らないときなどには、拘留又は科料に処する(同条例七条)ことができ、ふぐの取扱いに未熟な未経験者の無許可営業に対する取締のみならず、許可をうけた販売営業者魚介類販売業者に対しては、ふぐ内臓処理場施設基準に基く内臓処理場の設置、解体処理による除毒を励行させ、主としてふぐを調理販売する料理、飲食店業者に対しては、丸ふぐを扱うことを禁止し、かつ内臓も食用に供することを徹底的に防止しようとしているのである。

2  被告西尾、同植野の責任

従つて、ふぐ料理を客に提供する料理屋の調理師としては、本件条例に従い、猛毒を有するふぐの肝臓を飲食客に提供することは厳にさしひかえるべき注意義務があるというべく、被告西尾に右注意義務を怠つた過失があることは前記二の事実より明らかであり、被告植野が「よし香」の経営者であり、かつ被告西尾を調理師として雇用していたことは前記一のとおり当事者間に争いがない。

とすると、被告西尾は不法行為者として民法七〇九条により、被告植野は被告西尾の使用者として民法七一五条一項により、いずれも本件事故による損害を賠償すべき義務がある。

3  被告深広商店、同深井の責任

(一)  本件条例の前示立法趣旨によればふぐの販売に従事する者は、営業者であると従業員であるとを問わず本件条例に従い、ふぐの内臓を販売してはならないことは勿論、解体したふぐの内臓が何人かに持ち去られたりすることのないようその処理、管理に万全を期すべき注意義務があるのに、被告深広商店の従業員水谷芳明同深井勝の両名がこれを怠り、専用容器に収納するなどの措置をとらなかつたため魚介類の取引に関連して被告西尾が被告深広商店よりふぐの肝臓を持ち帰るのを黙認、放置した過失が認められることは前記二の認定事実により明らかであり、ふぐ料理を飲食客に提供する小料理店の調理師がふぐの肝臓を持ち帰れば、これを飲食客に提供し、それがため飲食客がふぐ中毒により死亡することがあり得ることは前叙のように高度の蓋然性をもつて予想し得るところであるから、右水谷芳明、深井勝の過失行為と本件事故による損害との間には相当因果関係があると認められる。

従つて被告深広商店は、その余について判断するまでもなく右二名の従業員の不法行為につき使用者として民法七一五条一項により本件事故による損害を賠償すべき義務がある。

(二) 被告深井が被告深広商店の代表取締役であり、その妻深井菅枝が同店の取締役であることは当事者間に争いがない。

<証拠>によれば、次の事実が認められる。

(1)  本件事故当時、被告深広商店の資本金は五〇万円であるが、内二五万円を被告深井が、内一五万円を深井菅枝が、残り一〇万円を同業者で取引先でもある吉相儀久が出資していたもので、同商店は被告深井所有家屋の一階を店舗としてその営業をなし、その二階に被告深井と深井菅枝の夫婦が居住し、被告深井の長男深井勝夫婦も右家屋に同居していた。又、被告深井菅枝以外の被告深広商店の従業員はアルバイトを除き一二名で、内四名が後記のとおり被告深井の家族であつた。

(2)  本件事故当時、被告深広商店では一般鮮魚加工販売、ふぐ解体加工販売、あなご加工販売、事務関係の四部門に業務が分担され、一般鮮魚部門は被告深井をその責任者とし、他に三名の従業員が、ふぐ部門は被告深井の長男深井勝を責任者とし、他に水谷芳明ほか一名の従業員が、あなご部門は被告深井の二男深井裕司を責任者とし、他に二名の従業員が、事務関係部門は深井菅枝を責任者とし、他深井勝の妻百合子、深井裕司の妻秀子ほか一名の従業員が、各担当していたほか、配達アルバイト三名を雇用していた。

(3)  しかしながら、右各部門といつても同一店舗内での内部的な業務分担であり、ことに一般鮮魚、ふぐ、あなごの各部門は単にその使用する調理台を別にするに過ぎず、顧客からの注文も各部門別に受けるわけではなく、各従業員が一括して注文を受けてはそれを各部門に伝えていたもので従つてその受注伝票も各部門毎に発行せず、被告深広商店として一括して発行していた。又、ふぐについてはその取扱い期間は九月一日から翌年三月末までの半年間に限られており、右以外のふぐを扱わない期間、前記ふぐ部門担当者は一般鮮魚部門を担当していた。

以上の事実が認められ、これに反する証拠はない。右事実関係によれば、被告深広商店は、被告深井を中心としその妻及び子供夫婦を主たる従業員とする小規模な同族会社で、被告深井は被告深広商店の営業全般につき現実に指揮監督する地位にあり、従つて前記ふぐ解体加工販売部門の従業員深井勝、同水谷芳明をも現実に指揮監督する地位にあつたものと推認することができ、他に右認定に反する証拠はない。

そうすると、被告深井は、前項で認定の被告深広商店の従業員深井勝、水谷芳明の不法行為につき、同商店の代理監督者として民法七一五条二項により本件事故による損害を賠償すべき義務があるといわなければならない。

四損害

そこで進んで本件事故による損害につき、検討する。

1  久善の逸失利益

(一)  久善が死亡時満三七才(昭和一二年二月九日生れ)であつたことは、被告西尾、同深広商店、同深井との間では当事者間に争いがなく、被告植野との間では<証拠>によりこれを認める。

前記一の争いのない事実、<証拠>によれば、久善は、本件事故による死亡当時、ポンプの販売等を業とする興亜商事株式会社(資本金六〇〇万円、従業員十数名)に経理担当の取締役として勤務し、昭和四九年一月から同年一二月までの一年間に給与として合計金三二九万四、〇〇〇円を得ていたこと、久善と同居の家族は妻原告紀子、昭和四八年八月八日出生の長男選定者耕一郎、久善の両親選定者正男(明治三五年一月一日生れ)、同ヨシ(明治三八年九月七日生れ)の四名で、原告紀子も小学校教諭として働いており、久善と原告紀子において右長男と両親を扶養していたことを認めることができ、これに反する証拠はない。

そして右事実関係によれば、久善は満六三才までの二六年間少くとも右年収額と同額の収入を得ることができ、右期間を通じ、右収入の四割にあたる生活費の支出を余儀なくされるものと推認できる。従つてホフマン式計算方法により年五分の割合による中間利息を控除した久善の逸失利益の同人死亡時の現価は、次の計算式により金三、二三七万一、四五五円となる。

(二) 原告紀子が久善の妻であり、選定者耕一郎が久善の長男であることは、前記一のとおり当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、他に久善の相続人はいないことが認められる。

従つて右両名において法定相続分に従い、原告紀子が三分の一に相当する金一、〇七九万〇、四八五円につき、選定者耕一郎が三分の二に相当する金二、一五八万〇、九七〇円につき、それぞれ右損害賠償請求権を相続したことが認められる。

2  治療費と死亡後の費用

(一)  久善入院費

<証拠>によれば、久善の八尾市民病院入院費として金六、二二〇円を原告温巳が出捐し、同額の損害を被つたことが認められる。

(二)  タクシー代

本件全証拠によるもこれを認めるに足る証拠がない。

(三)  兄弟呼戻旅費

<証拠>によれば、原告温巳は久善の八尾市民病院入院に際し、茅ケ崎市より同病院にかけつけ、原告紀子と共に右入院に際しての事務処理等に奔走し、又久善の死亡後は同人の葬儀の執行を原告紀子と共にし、そのための往復費用として東京と大阪間の東海道新幹線乗車賃金一万〇、〇二〇円を出捐し同額の損害を被つたことが認められる(なお他の兄弟の往復をもつて原告温巳の損害とすることはできない)。

(四)  大阪市立大学医師応援謝礼

本件全証拠によるもこれを認めるに足る証拠がない。

(五)  八尾市民病院関係者謝礼

<証拠>によれば、八尾市民病院関係者に対する謝礼の費用として、原告紀子が金一万七、六一〇円を出捐したことが認められる。

(六)  葬儀費用、初七日法事費用

<証拠>によれば、久善の葬儀費用として金五七万一、六〇〇円、初七日法事費用として金一万一、二〇〇円、合計金五八万二、八〇〇円を原告紀子が出捐したことが認められるが、本件事故と相当因果関係がある損害は金五〇万円と認めるのが相当である。

(七)  墓石代

<証拠>によれば、久善埋葬のため墓石を購入し、その代金四五万円を原告温巳が出捐したことが認められるが、墓石は久善個人のみためのものでなくその一家代々のためのものとも考え得ることをも斟酌し、本件事故と相当因果関係がある損害は、金二〇万円と認めるが相当である。

3  原告温巳のその他の有形無形の損害

本件全証拠によるも、前記認定の他に原告温巳が本件事故による損害を被つたと認めるに足る証拠はない。

4  以上の損害の合計は、原告紀子が金一、一三〇万八、〇九五円、選定者耕一郎が金二、一五八万〇、九七〇円、原告温巳が金二一万六、二四〇円となる。

5  過失相殺

前記二、三で認定のとおり、本件事故は、被告深広商店の従業員深井勝、同水谷芳明が被告西尾のふぐの肝臓の持ち去りを黙認、放置し、被告西尾が右ふぐの肝臓を久善に提供した各過失に起因するもので、本件事故が久善の一方的過失に基づくとの被告深広商店、同深井の主張は理由がない。

しかしながら同じく前記二、三の事実によれば、久善にも相殺さるべき過失が存する。即ち、ふぐの肝臓には猛毒が含まれ、これを食すれば死亡するに至ることもあり得ることは一般周知の事実なのであるから、一般飲食客としてもたとえ専門の調理師の調理にかかるとしてもこれを食することは差しひかえるべきであるのに、久善は本件事故以前から被告西尾の調理によりふぐの肝臓を食し、ついには本件事故により死亡するに至つたものでふぐの肝臓と知りつつこれを食した久善の不注意は相当の非難を免れない。

従つて、右久善の過失を斟酌とする、前記認定の損害額の五割をもつて慰藉料を除く損害につき被告らが賠償すべき額と認めるのが相当である。

そうすると慰藉料を除く損害につき被告ら各自の賠償すべき金額は、原告紀子に対し金五六五万四、〇四七円選定者耕一郎に対し金一、〇七九万〇、四八五円、原告温巳に対し金一〇万八、一二〇円となる。

6  原告紀子、選定者耕一郎、同正男、同ヨシの慰藉料

前記本件事故の態様、久善の年令、家族関係等本訴に現われた諸般の事情を考慮すると、その慰藉料は原告紀子、選定者耕一郎については各二〇〇万円、選定者正男同ヨシについては各一〇〇万円をもつて相当と認める。

7  以上を要約すると被告ら各自の賠償すべき金額は、原告紀子に対し金七六五万四、〇四七円、選定者耕一郎に対し金一、二七九万〇、四八五円、選定者正男、同ヨシに各金一〇〇万円、原告温巳に対し金一〇万八、一二〇円となる。

五次に、被告深広商店、同深井の主張並びに抗弁(二)について検討する。

<証拠>によれば、被告植野が久善の葬儀に際し香典として金二〇万円を出捐したことが認められるが、本件事故の態様等に照らし右が儀礼的な香典の範囲を越えたものとは認められないばかりか、右二〇万円をもつて本件事故による損害賠償の内入弁済と認めるに足る証拠もない。

被告深広商店、同深井の右内入弁済の抗弁は認められない。<以下、略>

(仲江利政 高橋水枝 上田昭典)

原告両名選定者目録<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例